小惑星探査機「はやぶさ」が地球へ帰還した後に何が計画されているのかを調べると、「はやぶさ2」「はやぶさ2♯」「はやぶさ3」「トリフネ」「1998 KY26」など複数の名称が出てくるため、どれが現在進んでいる正式な計画なのか分かりにくいと感じる人は少なくありません。
結論から述べると、2026年6月29日時点で進行している、はやぶさの次の計画に当たるものは、リュウグウの試料を地球へ届けた探査機をそのまま使う「はやぶさ2拡張ミッション」であり、2026年7月5日の小惑星トリフネへのフライバイと、2031年7月の小惑星1998 KY26への到着が大きな目標です。
これは新しい探査機を打ち上げる計画ではなく、2014年に打ち上げられたはやぶさ2を長期間運用し、当初の目的を達成した後も科学観測、超接近航法、地球スイングバイ、高速自転小惑星へのランデブーなどに挑戦する計画で、将来のプラネタリーディフェンスにもつながる重要な役割を持っています。
ここでは、トリフネで何を調べるのか、2031年までにどのような経路を通るのか、1998 KY26がなぜ注目されているのか、試料を再び地球へ持ち帰るのか、はやぶさ3という正式計画があるのかまでを整理し、今後の発表を見る際に混同しやすいポイントも含めて紹介します。
はやぶさの次の計画は何か

現在進められている計画は、はやぶさ2の機体を継続利用する拡張ミッション「はやぶさ2♯」であり、別の探査機を新たに打ち上げて始める単純な続編ではありません。
リュウグウから採取した試料入りカプセルを2020年12月6日に地球へ届けた後も、探査機本体には飛行と観測を続けられる能力が残っていたため、軌道を変更して新しい小惑星へ向かう長期計画が始まりました。
今後の大きな節目は、2026年7月5日のトリフネフライバイ、2027年12月と2028年6月の地球スイングバイ、2031年7月の1998 KY26へのランデブーであり、予定日は運用状況によって更新される可能性があるため公式発表の確認も重要です。
現在ははやぶさ2♯が進行中
はやぶさ2拡張ミッションは「はやぶさ2♯」と表記され、「♯」は音楽記号のシャープと同じように読む名称ですが、単なる愛称ではなく、リュウグウ往復後の新しい目的を分かりやすく示すために使われています。
英語ではSmall Hazardous Asteroid Reconnaissance Probeの意味も持ち、小さくても地球に衝突すれば被害を生じさせる可能性がある天体を調べ、将来の危険天体探査に必要な観測方法や航法技術を蓄積する方向性が示されています。
| 時期 | 主な予定 | 探査方法 |
|---|---|---|
| 2026年7月5日 | 小惑星トリフネ | 高速フライバイ |
| 2027年12月 | 地球へ接近 | スイングバイ |
| 2028年6月 | 地球へ再接近 | スイングバイ |
| 2031年7月 | 1998 KY26 | ランデブー |
JAXAが2026年6月に公表した今後の予定では、この四つが主要イベントとして示されており、まずはトリフネとの一度限りの接近を成功させることが直近の目標です。
拡張ミッションは当初から保証された機器寿命を超えて続く挑戦でもあるため、2031年の最終目的地だけを成果地点にするのではなく、航行中の観測や運用実証を積み重ね、途中段階でも科学的、工学的な成果を得る方針が取られています。
直近の目標はトリフネ
はやぶさ2が次に接近する天体は、小惑星番号98943のトリフネで、発見時には2001 CC21という仮符号で呼ばれていましたが、公募を経て日本神話に由来する現在の名称が付けられました。
トリフネは直径500メートル程度の細長い天体と推定されているものの、地上の望遠鏡では表面の地形や岩石の分布を詳細に捉えられないため、探査機による近接画像には大きな科学的価値があります。
- 実施予定日は2026年7月5日
- 中心から約1キロメートルを通過
- 相対速度は秒速約5キロメートル
- 推定される大きさは約500メートル
- 現在はS型小惑星の可能性が高い
リュウグウは炭素を比較的多く含むC型小惑星でしたが、トリフネは初代はやぶさが訪れたイトカワに近いS型と考えられているため、異なる小惑星の形状、表面状態、熱的性質を同じ探査機の装置で比べられる可能性があります。
ただしフライバイは天体の近くに長期間とどまる探査ではなく、短時間ですれ違いながら撮影する方法なので、取得できる情報は観測条件、通過距離、カメラの向き、天体の実際の形状などに大きく左右されます。
約1キロメートルまで接近する
トリフネフライバイでは、小惑星の中心から約1キロメートルという非常に近い距離を秒速約5キロメートルで通過する計画で、幅を約500メートルと仮定すると、天体の大きさに相当する距離を約0.1秒で横切るほどの速さです。
高速で移動する探査機から小さな天体を撮影するには、トリフネの位置と探査機の軌道を高い精度で予測し、限られた時間内に観測対象がカメラの視野へ入るように姿勢や撮影時刻を設定しなければなりません。
2026年6月24日に掲載された運用状況報告では、地球との通信に片道約6分かかる状況が紹介されており、最接近の瞬間に地上から操縦して進路を細かく修正することはできないため、事前準備と探査機側の処理が重要になります。
接近距離を小さくすれば表面を高い解像度で撮影しやすくなる一方、位置の予測誤差や未知の形状を考慮した安全確保が難しくなるため、単純に近づけばよいのではなく、観測価値と衝突回避を両立させる設計が必要です。
このような超高速、超接近の運用に成功すれば、別の目的で開発された探査機を活用して緊急に小惑星を調査する方法や、小さな天体へ探査機を正確に誘導する方法の実証にもなります。
地球スイングバイを2回行う
トリフネを通過したはやぶさ2は、そのまま一直線に1998 KY26へ向かうのではなく、2027年12月と2028年6月に地球へ接近し、地球の重力を利用するスイングバイを2回行う予定です。
スイングバイは、天体の周囲を通過するときに受ける重力を利用して、探査機の進行方向や太陽を基準にした速度を変える方法で、搭載している推進剤だけでは難しい大幅な軌道変更を実現できます。
ただし重力から無条件にエネルギーを得られる仕組みではなく、地球が太陽を回る運動と探査機の接近方向を組み合わせて軌道を変えるため、接近時刻や通過位置に小さなずれがあるだけでも、その後の到着条件に影響する可能性があります。
地球へ戻ってくると聞くと試料カプセルを再び投下するように思えますが、現時点で示されている2027年と2028年の接近は軌道変更を目的とするもので、2020年のカプセル帰還とは目的が異なります。
地球スイングバイを終えた後は1998 KY26と同じ場所、同じ時刻に到達できる軌道へ探査機を合わせていくため、長期間にわたる精密な軌道決定と、必要に応じた小さな修正運用が続きます。
最終目的地は1998 KY26
はやぶさ2拡張ミッションの最終目的地は、直径約30メートル、またはそれより小さい可能性がある地球近傍小惑星1998 KY26で、2031年7月の到着が予定されています。
この天体は約10分で1回転する高速自転小惑星であり、直径約1キロメートルで自転周期が約7.6時間だったリュウグウとは、大きさも回転速度も大幅に異なります。
地上からの観測だけでは、一枚岩に近い天体なのか、複数の岩石や粒子が重力で緩く集まった天体なのか、表面に細かな砂が存在できるのかといった構造を十分に判断できないため、近くにとどまるランデブー探査が必要です。
JAXAは1998 KY26への到着を、超小型かつ高速自転する小惑星に対する世界初のランデブー探査として位置付けており、形状、組成、自転、表面環境、周辺の力学環境などを調べることを目指しています。
直径数十メートル級の天体は巨大な小惑星より発見や詳細観測が難しい一方、地球へ接近する個体数が多いと考えられるため、危険度評価や衝突回避方法を検討するうえでも実物の性質を知る意味があります。
再度の試料採取は予定されていない
はやぶさ2と聞くと、小惑星へ着陸して砂や岩石を採取し、カプセルを地球へ持ち帰る姿を想像しやすいものの、現在公表されている拡張ミッションの主要予定には、トリフネや1998 KY26からの新たな試料採取は含まれていません。
トリフネでは秒速約5キロメートルで通過するため着陸や採取を行う時間はなく、画像、温度、明るさ、色などの遠隔観測を限られた時間内に実施するフライバイ探査が中心です。
1998 KY26では天体の近くへ到着して相対的な位置を合わせるランデブーを目指しますが、リュウグウで使用した採取装置を再び使うことや、採取物を地球へ届けることは、JAXAが示している2031年までの基本スケジュールには明記されていません。
特に1998 KY26は重力が非常に弱く、高速自転による遠心力も無視できないため、接触や着陸を考える場合は、リュウグウとは異なる安全性、姿勢制御、退避方法を検討する必要があります。
したがって今回の次の計画は、二度目のサンプルリターンではなく、既存機を長寿命運用して未探査の小天体を観測し、新しい航法と探査方法を実証するミッションと捉えるのが適切です。
はやぶさ3は正式名称ではない
はやぶさ2の次に向かう天体があることから、計画全体を「はやぶさ3」と考える人もいますが、2026年6月29日時点でJAXAが公表している現在の正式な探査計画は、既存のはやぶさ2を使用する拡張ミッションです。
つまりトリフネや1998 KY26へ向かっている機体は新造された3号機ではなく、2014年12月3日に打ち上げられ、リュウグウを探査し、2020年に試料カプセルを地球へ届けた同じ探査機です。
将来、はやぶさの技術や成果を継承する別のサンプルリターン計画が検討される可能性はありますが、構想段階の研究、研究者による提案、正式に採択されたプロジェクト、打上げが決定したミッションは区別して確認する必要があります。
ニュースや動画の見出しに「次世代はやぶさ」「ポストはやぶさ」などの表現が使われていても、それが機体の正式名称とは限らないため、JAXAのミッション一覧、プレスリリース、プロジェクト公式サイトの表記を基準に判断すると混乱しにくくなります。
現段階では「はやぶさ3を待つ」というよりも、稼働中のはやぶさ2♯が2026年のトリフネ、二度の地球スイングバイ、2031年の1998 KY26へ進む一連の過程を追うことが、次の計画を理解する近道です。
トリフネフライバイで何を確かめるのか

トリフネ探査の目的は、小惑星の写真を撮影するだけではなく、地上観測では分からない形状や表面の性質を調べること、高速接近時の観測手順を実証すること、極めて正確な航法技術を獲得することにあります。
はやぶさ2は本来、リュウグウの近くへ長期間滞在するランデブー探査を想定して設計されており、秒速約5キロメートルで未知の天体とすれ違う今回の運用は、機体と観測機器の新しい使い方への挑戦です。
成功すれば、将来地球へ接近する小惑星が急に見つかった際に、既存技術を応用して短期間で接近観測を行うための判断材料も増えます。
形状や表面を観測する
トリフネは地上観測によって大きさや自転、反射光の特徴などが推定されていますが、遠方からは点に近い像としてしか見えないため、全体が一つの細長い岩なのか、くびれた形なのか、複数の塊が接した構造なのかは近接画像が得られるまで確定できません。
探査機に搭載された光学航法カメラや中間赤外カメラを活用できれば、可視光画像だけでなく、色の違い、表面温度、熱の伝わり方などから、岩石の分布や表面物質の細かさを推定できる可能性があります。
- 天体全体の輪郭
- 表面の明暗分布
- クレーターや岩塊
- 自転に伴う見え方
- 表面温度の変化
- イトカワとの共通点
トリフネがS型小惑星であれば、イトカワと同じ大分類に入るものの、同じ型に分類される天体が必ず同じ形状や内部構造を持つわけではないため、二つの天体を比較することでS型小惑星の多様性を考えられます。
一方でフライバイでは見える面や照明条件が限られ、天体の裏側を同じ精度で観測できない可能性もあるため、取得した画像から天体全体の性質を推定するときは、観測できた範囲とモデルによる補完を区別する必要があります。
高速航法の精度を試す
トリフネを高い解像度で撮影するには、探査機を天体の近くへ通すだけでなく、最接近前後のどの時刻に、どの方向へカメラを向け、どの露出条件で撮影するかを正確に決める必要があります。
地球から探査機までの通信には時間がかかるため、管制室で画像を見てから手動で向きを合わせる方法では間に合わず、事前に作成した運用計画と探査機が取得する情報を組み合わせた自律的な処理が欠かせません。
| 課題 | 必要になる対応 |
|---|---|
| 天体位置の誤差 | 接近前の連続撮影 |
| 高速な相対移動 | 撮影時刻の精密化 |
| 通信時間の遅れ | オンボード処理 |
| 未知の形状 | 安全余裕の確保 |
| 短い観測時間 | 優先順位の設定 |
接近前には、撮影した画像からトリフネが予測位置のどこに見えるかを確認し、必要に応じて軌道や観測時刻を調整する作業が行われます。
最接近距離を小さく設定しながら衝突を避け、観測対象をカメラの視野に収められれば、小型天体に対する軌道誘導、画像航法、自律制御、地上運用を一体化した技術の有効性を示せます。
地球防衛の技術につなげる
プラネタリーディフェンスとは、地球へ接近する小惑星や彗星を発見して軌道を予測し、衝突の可能性が高い場合には観測、避難、軌道変更などの対応を検討する活動です。
危険な天体の進路を探査機の衝突によって変える方法を実行するには、遠く離れた小さな目標へ探査機を高い精度で誘導し、予定した位置と角度で到達させる能力が求められます。
はやぶさ2はトリフネへ衝突するのではなく安全に通過する計画ですが、中心から約1キロメートルを秒速約5キロメートルで通過させる誘導は、小型天体へ探査機を正確に命中させる技術と共通する要素を持っています。
さらに、危険天体が発見されてから十分な準備期間を取れない場合には、専用機だけでなく既存の探査機や成熟した機器を応用した緊急観測が必要になる可能性があるため、ランデブー用の機体で高速フライバイを行う経験にも価値があります。
JAXAのプラネタリーディフェンス紹介では、トリフネの超接近運用と1998 KY26の探査を一連の取り組みとして位置付けており、科学観測と地球防衛技術を同時に前進させる点が拡張ミッションの特徴です。
1998 KY26探査が重要な理由

1998 KY26が注目される最大の理由は、探査機がこれまで詳しく調べてきた小惑星よりはるかに小さく、約10分という短時間で自転する特殊な天体だからです。
小さな天体は重力が弱いため、表面に物質を保持する仕組みや、探査機が安全に近づく方法が大型小惑星とは異なり、リュウグウで得た経験をそのまま適用できるとは限りません。
2031年に予定されるランデブーでは、天体と探査機の相対速度を小さくして周辺にとどまり、短時間のフライバイでは得にくい自転、形状、組成、表面環境の変化を継続的に観測することが目標になります。
直径約30メートルの天体
1998 KY26の直径は約30メートル、またはそれより小さい可能性があると推定されており、約900メートル級のリュウグウと比べると、直径ではおよそ数十分の一の規模です。
直径が小さくなると反射する太陽光も少なくなるため、地上の望遠鏡で継続的に観測することが難しく、形状、表面の模様、岩石の大きさ、内部構造などには大きな不確実性が残ります。
- 推定直径は約30メートル以下
- 自転周期は約10分
- 地球近傍小惑星に分類
- 超小型天体の構造が研究対象
- 2031年7月に到着予定
一つの硬い岩が回転している場合と、複数の岩石が集まったラブルパイル構造の場合では、探査機を接近させる際の危険性や、将来軌道を変更するために必要な力の加え方が変わります。
この大きさの天体を近くから継続観測した事例は限られるため、1998 KY26の調査結果は一つの小惑星を理解するだけでなく、観測が難しい数十メートル級天体全体のモデルを改善する材料になります。
フライバイより詳しく調べられる
フライバイとランデブーは、どちらも天体へ接近する探査方法ですが、探査機と天体の相対速度、観測できる期間、取得できる情報量に大きな違いがあります。
トリフネでは高速ですれ違うため最接近前後の短時間に観測を集中させますが、1998 KY26では天体とほぼ同じ方向へ移動する状態を作り、その周辺で長期間にわたって観測することを目指します。
| 比較項目 | フライバイ | ランデブー |
|---|---|---|
| 相対速度 | 大きい | 小さく調整 |
| 滞在時間 | 短い | 長期間 |
| 観測方向 | 限られやすい | 複数方向が可能 |
| 必要な燃料 | 比較的少ない | 軌道調整が必要 |
| 得られる情報 | 瞬間的 | 継続的 |
ランデブーが成立すれば、自転によって異なる面が順番に見える様子を観測し、複数方向の画像から立体形状を作成したり、時間帯による表面温度の変化を測ったりできる可能性があります。
ただし高速自転する小天体の周囲では重力だけで単純な安定軌道を作れるとは限らず、探査機の位置をどのように維持するか、どこまで接近できるかは、到着後に分かる天体の質量や形状にも左右されます。
長期運用そのものが実証になる
はやぶさ2は2014年12月に打ち上げられたため、2031年に1998 KY26へ到着すれば、打上げから約16年半に及ぶ非常に長い運用になります。
探査機は当初のリュウグウ往復ミッションを基準に設計されており、拡張期間における全機器の寿命が保証されているわけではないため、部品の劣化、温度環境、放射線、推進系の損耗、通信性能などを確認しながら運用しなければなりません。
一方で、長期間の航行中に機器の状態を把握し、運用頻度を調整し、限られた電力や推進剤を管理する経験は、将来の火星、小惑星、外惑星探査で必要になる省力化運用や長寿命設計へ活用できます。
航行中には小惑星探査だけでなく、光学航法カメラを利用した黄道光、惑星間塵、恒星、太陽系外惑星に関する観測も進められており、目的地へ向かう時間を科学成果へ変える試みも行われています。
仮に一部の機器が2031年より前に使用できなくなった場合でも、それまでに得られた長期運用データ、トリフネ観測、地球スイングバイ、航法実績は次世代探査機の設計や運用へ残るため、拡張ミッションは段階的に成果を積み上げる計画になっています。
はやぶさの技術を受け継ぐ日本の探査

はやぶさの次の計画を広い意味で考える場合、はやぶさ2♯だけでなく、日本が進めるMMXやDESTINY+にも目を向ける必要があります。
これらは「はやぶさ3」という名称ではありませんが、イオンエンジン、深宇宙航法、小天体への接近、試料採取、長距離通信など、はやぶさシリーズで培われた技術と経験を発展させる計画です。
目的地や探査方法が異なる複数の計画を並行して進めることで、日本の深宇宙探査は一つの機体の成功を繰り返す段階から、用途に応じた技術体系を広げる段階へ進んでいます。
MMXは火星衛星を目指す
火星衛星探査計画MMXは、火星の衛星フォボスとダイモスを観測し、フォボスの表面から試料を採取して地球へ持ち帰ることを目指す国際的なサンプルリターン計画です。
2026年度の打上げ、2027年度の火星圏到着、2031年度の地球帰還が想定されており、はやぶさ2が小惑星で実現した往復探査を、より遠く複雑な火星衛星圏へ拡張する役割を持っています。
| 比較項目 | はやぶさ2♯ | MMX |
|---|---|---|
| 使用機体 | 既存機の延長運用 | 新規開発機 |
| 主な目的地 | 地球近傍小惑星 | 火星衛星フォボス |
| 試料採取 | 現在の予定になし | 10グラム以上を目標 |
| 地球帰還 | 現在の予定になし | 2031年度を想定 |
| 主な技術 | 長期運用と小天体航法 | 火星圏往還と採取 |
MMXでは火星の重力の影響を受けながらフォボスの近くを飛行する擬周回軌道を利用し、着陸、観測、採取、離脱、地球帰還を行うため、小惑星より複雑な軌道設計と運用が必要です。
MMX公式のミッション概要では、フォボスから10グラム以上の試料を持ち帰る目標が示されており、火星衛星の起源や水、有機物などの物質輸送を調べることが期待されています。
DESTINY+は高速フライバイを発展させる
深宇宙探査技術実証機DESTINY+は、イオンエンジンや小型軽量の探査機技術を実証しながら、複数の小天体を高速フライバイして観測する計画です。
2024年度から2025年度にかけて計画が見直され、公式サイトではESAのRAMSESとH3ロケットへ相乗りして2028年度に打ち上げ、小惑星アポフィスを経て、2030年度にふたご座流星群の母天体フェートンへフライバイする計画が示されています。
- 2028年度に打上げを計画
- H3ロケットで直接投入
- アポフィスをフライバイ
- フェートンを観測
- 惑星間ダストを分析
- 複数天体の通過を目指す
DESTINY+の探査機設計には、はやぶさ2で惑星間空間を航行した機器やイオンエンジン運用の経験が生かされており、トリフネで得られる高速接近観測の知見も将来の運用検討に役立つ可能性があります。
打上げ時期や訪問天体はロケットや国際計画との調整によって変更される場合があるため、古い資料に掲載された2024年度打上げなどの情報ではなく、DESTINY+公式サイトの更新内容を確認することが大切です。
名前より探査技術の継承を見る
はやぶさの次の計画を探す際には、後継機に同じ名称が付いているかだけで判断すると、日本の宇宙探査全体で進んでいる技術の発展を見落としやすくなります。
初代はやぶさはイオンエンジン、自律航法、小惑星からの試料採取、地球帰還を実証し、はやぶさ2はその信頼性を高めながら人工クレーター作成や地下物質の採取へ挑戦しました。
はやぶさ2♯は既存機の長寿命化、高速フライバイ、超小型天体ランデブーを担当し、MMXは火星衛星からのサンプルリターン、DESTINY+は小型機による複数天体フライバイへ技術を広げています。
この流れを見ると、一機ごとに同じ目的を繰り返すのではなく、前の計画で確立した技術を土台にして、距離、対象天体、観測方法、運用期間の難易度を段階的に高めていることが分かります。
そのため「はやぶさ3がいつ打ち上がるか」という一点だけでなく、はやぶさ2♯、MMX、DESTINY+、プラネタリーディフェンス関連計画の役割を並べて追うと、日本の次の宇宙探査がどこへ向かっているのかを理解しやすくなります。
今後の発表で注目したいポイント

はやぶさ2拡張ミッションは、2031年まで複数の重要イベントが続く長期計画であるため、予定日だけでなく、各段階で何が確認され、次の運用へどのようにつながったかを見ることが重要です。
特にトリフネフライバイでは、最接近そのものの成否、取得画像の解像度、観測できた表面範囲、探査機の健全性、1998 KY26へ向かう軌道への影響を分けて確認する必要があります。
ニュースの見出しだけで成功や失敗を判断せず、速報、画像受信、機器データの確認、科学解析という異なる段階を意識すると、発表内容を正確に理解できます。
速報と科学成果を区別する
フライバイ直後に発表される速報では、探査機からの電波が確認できたか、予定した姿勢や軌道で通過したか、画像データが記録されたかなど、運用上の基本的な結果が中心になります。
画像は地球へ送信するまで時間がかかり、受信したデータにも補正や確認が必要になるため、最接近直後に高精細な完成画像や天体の詳しい構造がすべて公表されるとは限りません。
- 探査機の通信確認
- 最接近時刻の推定
- 通過距離の確定
- 画像データの受信
- 機器状態の確認
- 形状モデルの作成
- 論文による科学評価
天体の正確な形状、自転軸、表面物質、温度分布などは、複数の画像や観測機器のデータを組み合わせて解析する必要があるため、数週間から数カ月以上かけて段階的に成果が示される可能性があります。
最初の画像が不鮮明に見えても、航法用の撮影、遠距離画像、最接近画像では目的や条件が異なるため、一枚だけでミッション全体の成果を評価しないことが大切です。
予定変更の意味を確認する
深宇宙探査では、軌道修正、機器の状態、通信環境、天体位置の推定精度などに応じて、撮影時刻、最接近距離、使用する観測機器、運用手順が変更されることがあります。
変更が発表された場合でも、それだけでトラブルや計画失敗を意味するとは限らず、安全性や観測成功率を高めるために最新のデータを反映した結果である場合があります。
| 発表内容 | 確認したい意味 |
|---|---|
| 接近距離の変更 | 安全性と解像度の調整 |
| 撮影時刻の変更 | 最新軌道への対応 |
| 機器の使用中止 | 電力や健全性の判断 |
| 画像公開の遅れ | 受信や処理の進行状況 |
| 軌道修正の実施 | 次の目標への精密誘導 |
反対に、予定どおりフライバイを終えても、画像が対象を捉えているか、観測機器が正常に動いたか、2031年へ向かう軌道条件を維持できたかは別々に確認されます。
公式発表を読む際は「探査機の生存」「航法の成功」「観測データの取得」「科学的発見」という複数の評価軸を分けると、長期ミッションの進み方を理解しやすくなります。
公式情報を継続して確認する
はやぶさ2の最新状況を追う場合は、JAXAのプレスリリース、宇宙科学研究所のミッションページ、はやぶさ2プロジェクト公式サイトの三つを中心に確認すると、予定、運用状況、科学成果を把握しやすくなります。
プレスリリースでは社会的に重要な決定や日程が発表され、プロジェクトサイトでは日々の運用、画像、担当者による説明、観測機器の状態など、より細かな情報が更新されます。
過去の記事には目標天体の仮符号である2001 CC21、以前の候補軌道、変更前の日程が残っているため、公開日を見ずに読むと現在のトリフネ計画や最新スケジュールと混同する可能性があります。
特に検索結果の要約部分だけでは「予定」と「実施済み」が区別しにくいことがあるため、2026年7月5日より前に読む場合はフライバイが今後の予定であり、結果はまだ確定していない点に注意が必要です。
2031年までには探査機の状態や軌道計画が更新される可能性もあるため、現在の予定を固定された結果として扱わず、節目ごとにはやぶさ2公式サイトを確認する姿勢が適しています。
はやぶさ2の旅は2031年まで続く
はやぶさの次の計画として現在進んでいるのは、新造機のはやぶさ3ではなく、リュウグウからの試料帰還を終えた同じ機体を活用する拡張ミッション「はやぶさ2♯」です。
直近では2026年7月5日に小惑星トリフネの中心から約1キロメートルを秒速約5キロメートルで通過し、表面の観測と超高速、超接近航法の実証に挑み、その後は2027年12月と2028年6月に地球スイングバイを行います。
最終目的地となる1998 KY26には2031年7月の到着が予定されており、直径約30メートル以下、約10分で自転する超小型天体へランデブーすることで、内部構造や表面環境を調べ、将来の危険天体対策にも役立つ情報を得ることが期待されています。
今回の拡張ミッションでは新たな試料採取や地球帰還は主要予定に含まれていませんが、長期運用、画像航法、地球スイングバイ、小天体への精密接近などの経験は、MMXやDESTINY+をはじめとする日本の次世代探査へ受け継がれます。
トリフネのフライバイ結果は一度の速報ですべて判明するものではないため、探査機の健全性、画像受信、通過距離の確定、科学解析を段階的に追いながら、2031年の1998 KY26到着へ続く長い旅として見守ることが大切です。



