日本人の女性宇宙飛行士は宇宙で生理になったときにどうするのか、無重力では経血が体内に戻らないのか、生理用品を交換できる場所はあるのかと疑問に感じる人は少なくありません。
結論からいうと、女性は宇宙でも月経を迎えることができ、月経そのものが宇宙飛行を不可能にするわけではありませんが、水や収納場所が限られ、トイレの構造も地上と異なるため、任務中の月経をあらかじめ抑える方法が選ばれることもあります。
ただし、すべての女性宇宙飛行士が月経を止めているわけではなく、自然な周期を保つか、ホルモン剤などを利用するかは、本人の希望、体質、持病、任務期間、医療上のリスクを踏まえて専門医と相談する個別の選択です。
ここでは宇宙で月経が起こる仕組み、生理用品やトイレの使い方、月経を抑える方法の利点と注意点に加え、向井千秋さん、山崎直子さん、米田あゆさんという日本人女性宇宙飛行士の歩みを、公開情報と宇宙医学の研究をもとに整理します。
日本人女性宇宙飛行士の生理はどうなる

宇宙に行くと重力の影響が大きく変わりますが、それだけで子宮や卵巣の働きが直ちに止まり、月経が起こらなくなると確認されているわけではありません。
一方で、宇宙飛行中の月経については対象者が少なく、自然な周期を保った長期滞在者の研究も限られているため、地上と完全に同じだと断定するのではなく、分かっていることと未解明のことを分ける必要があります。
実際の任務では月経が起こるかどうかだけでなく、痛み、出血量、衛生用品、廃棄物、医薬品、限られた水、緊急時の対応まで含めた健康管理として準備されます。
宇宙でも月経は起こる
女性の月経は、脳から分泌されるホルモン、卵巣で作られるエストロゲンやプロゲステロン、妊娠に備えて厚くなる子宮内膜などが連動して起こる現象であり、経血が重力だけによって排出されているわけではありません。
宇宙飛行では体液の分布、筋肉量、骨量、睡眠、免疫などに変化が生じますが、月経周期を持つ女性が宇宙で通常の月経を迎えられないという確立した医学的根拠はなく、月経を行うための設備も用意されています。
ただし、女性宇宙飛行士の人数が男性より少なかった歴史や、長期任務ではホルモン剤を用いて月経を抑える人が多いことから、自然な月経周期が長期間の宇宙環境でどのように変化するかを直接示すデータは十分ではありません。
2024年に公表された生殖健康に関する系統的レビューでも、宇宙環境を模した実験では一部のホルモン濃度に変化が見られた一方、子宮出血の変化を直接調べた研究は不足しているとされており、今後も継続的な研究が必要です。
したがって、宇宙でも月経は可能というのが現在の基本的な理解ですが、周期の乱れ、出血量、月経前症候群、月経痛などが地上とまったく同じになるとまでは言い切れない点を押さえておくことが大切です。
経血は体内にたまらない
無重力になると経血が外へ出ず、子宮内や腹部にたまって危険になるという説が語られることがありますが、宇宙で月経を迎えた女性に特有の重大な逆流障害が起きると確認された事実はありません。
月経時の排出には子宮の収縮や体内の圧力も関係しているため、地上で水が下へ流れるような単純な重力依存の現象として捉えると、月経の仕組みを誤って理解してしまいます。
| 疑問 | 現在の基本的な考え方 |
|---|---|
| 経血が浮遊するのか | 体外へ出るまでは通常の体内経路を通る |
| 子宮にたまるのか | 宇宙特有の蓄積が起こる根拠は確認されていない |
| 月経が止まるのか | 無重力だけで必ず止まるわけではない |
| 地上と完全に同じか | 長期的な影響には未解明部分がある |
地上でも一部の経血が卵管側へ流れる逆行性月経は起こり得ますが、その現象と宇宙で経血がすべて逆流するというイメージは別のものであり、両者を混同しないことが重要です。
宇宙で月経を避ける選択が行われる主な理由は、経血が体内にたまるからではなく、衛生管理、物資量、廃棄、痛みへの対応、任務への集中といった実務面にあります。
月経を止める選択もある
宇宙飛行士は医師と相談したうえで、ホルモン剤や子宮内に装着する医療器具などを利用し、任務中の月経を抑える医療的な月経抑制を選ぶことがあります。
長期任務では出発日に合わせて月経日だけをずらす方法では対応しにくいため、地上で十分な期間をかけて効果と副作用を確認し、宇宙滞在中も安定して使用できる方法を選ぶことが重要です。
- 低用量ピルなどの連続服用
- 黄体ホルモンを放出する子宮内システム
- 皮下に装着するホルモンインプラント
- 自然な周期を保って生理用品を使う方法
月経を抑えると衛生用品と廃棄物を減らせる可能性がありますが、不正出血が起こることもあり、すべての人が完全な無月経になるわけではありません。
女性宇宙飛行士の医療的月経抑制を扱った研究でも、月経を抑えるかどうかは一律に決めるものではなく、最終的には本人が十分な説明を受けて選択すべきだとされています。
生理用品は持ち込める
宇宙で自然な月経を迎える場合には、地上で使用されるナプキンやタンポンなどの衛生用品を持ち込むことができるため、生理用品が存在せず月経を迎えられないというわけではありません。
ただし、宇宙船へ運べる荷物には重量と容積の制約があり、個包装、交換回数、予備の数、使用済み用品の密封袋、保管期間まで事前に見積もる必要があります。
無重力環境では袋や小さな部品も固定しなければ浮いてしまうため、交換前の用品、衣類、廃棄用の袋を手の届く位置へ固定し、作業手順を整えておくことが地上以上に重要です。
月経カップは繰り返し使えるため廃棄物を減らせる可能性がありますが、取り外し、経血の処理、洗浄、乾燥、保管に関する課題があり、有人宇宙飛行で一般的に使われてきた方法だと断定することはできません。
2025年には宇宙飛行に近い条件で月経カップを評価する研究も発表されていますが、新しい器具を実任務へ導入するには、微生物管理、素材の安全性、使用者の訓練、廃液処理を含む検証が欠かせません。
トイレは吸引式になっている
国際宇宙ステーションのトイレでは、排泄物が船内へ浮遊しないように空気の流れを利用して吸引し、使用者は足や体を固定して適切な位置を保ちます。
尿はホースを使って吸引され、処理設備によって水の回収に利用されるため、地上の水洗トイレのように大量の水で経血や排泄物を流す使い方はできません。
月経中は生理用品に経血を吸収させて交換し、使用済み用品を袋へ密封して固形廃棄物として管理することが基本となるため、経血を尿回収用のホースへ積極的に流し込むような使い方は想定されていません。
トイレの構造や水再生装置は更新されることがあるため、具体的な使用手順は搭乗する宇宙船や滞在施設ごとに異なり、宇宙飛行士は地上で繰り返し訓練してから任務に臨みます。
JAXAが紹介するISSでの日常生活では、宇宙のトイレが掃除機のような吸引方式を用い、体を固定して使用する仕組みが紹介されています。
清潔維持には工夫が要る
国際宇宙ステーションには地上のような風呂、シャワー、洗面台がなく、水滴が船内へ飛散しないように濡れたタオルや清拭用のワイプ、水を使わないシャンプーなどで体を清潔にします。
月経中も大量の流水で陰部を洗うことはできないため、肌への刺激が少ない清拭用品、下着、交換用の衛生用品、密封袋を組み合わせて清潔を保つ必要があります。
交換頻度を必要以上に減らすと蒸れや漏れの原因になり、反対に過剰な交換は物資と廃棄物を増やすため、地上での出血量や肌の状態をもとに現実的な数量を計画することが重要です。
洗濯機もないため、汚れた衣類をその場で通常どおり洗濯することは難しく、予備の下着や衣類、汚染した物を分けて保管する袋も月経管理の一部になります。
こうした制約は女性だけの問題ではなく、汗、排泄、皮膚トラブル、衣類の交換など宇宙生活全体に共通する課題であり、月経用品もほかの生活用品と同じく任務設計に組み込まれます。
痛みや体調変化も管理される
月経時には腹痛、腰痛、頭痛、倦怠感、眠気、吐き気、気分の変化などが起こることがあり、症状が強ければ集中力や細かな作業の正確さに影響する可能性があります。
宇宙飛行士は打ち上げ前から健康状態を継続的に確認され、普段使用している薬の効果、副作用、保管方法、宇宙環境での安定性を医療チームが検討します。
宇宙酔い、睡眠不足、脱水、便秘、任務の緊張などが月経に伴う不調と重なる場合もあるため、症状を月経だけの問題だと決めつけず、全身状態を確認することが必要です。
国際宇宙ステーションには医療用品があり、応急処置を担当するクルーも訓練を受けていますが、地上の病院と同じ検査や治療をすぐに行えるわけではありません。
JAXAの宇宙飛行士健康管理運用が示すように、打ち上げ前、宇宙滞在中、帰還後を通じてフライトサージャンを中心とする専門家が健康を支えています。
個人の月経情報は公開されない
向井千秋さんや山崎直子さんが宇宙飛行中に月経を迎えたか、どのような生理用品やホルモン剤を使ったかといった情報は、公式経歴から確認できる一般的な活動実績ではありません。
月経の有無、避妊方法、服薬内容、婦人科疾患、更年期の状態は個人の医療情報であり、本人や所属機関が明確に公表していない限り、年齢や飛行日程だけから推測すべきではありません。
女性宇宙飛行士の生理を知りたいという疑問に答える際には、宇宙医学として一般に分かっている仕組みと、特定の人物の私生活や診療情報を分ける必要があります。
生理を止めた可能性が高い、飛行中は閉経していたはずだといった根拠のない断定は、医学的にも正確ではなく、宇宙飛行士本人の尊厳やプライバシーを損ねます。
注目すべきなのは個人の月経日ではなく、性別にかかわらず安全に任務を行える設備、医療支援、研究、物資計画が整備されているかという点です。
日本人女性宇宙飛行士は3人いる

2026年6月時点で、JAXAの宇宙飛行士として選抜または認定された日本人女性は、向井千秋さん、山崎直子さん、米田あゆさんの3人です。
向井さんと山崎さんはすでに宇宙飛行を経験しており、米田さんは2024年10月に宇宙飛行士として認定され、将来のミッションへのアサインメントに向けた訓練を進めています。
3人の経歴を確認すると、女性宇宙飛行士の役割が特別な女性向け業務に限定されるのではなく、科学実験、ロボットアーム操作、物資移送、船外活動訓練など有人宇宙活動全体に広がっていることが分かります。
向井千秋
向井千秋さんは医師としての経験を持ち、1985年に宇宙飛行士へ選定され、1994年にスペースシャトルのコロンビア号へ搭乗したアジア人初の女性宇宙飛行士です。
1994年のSTS-65ミッションではライフサイエンスや宇宙医学に関する実験を行い、1998年のSTS-95ミッションにも搭乗して、合計2回の宇宙飛行を経験しました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 選定 | 1985年 |
| 初飛行 | 1994年 |
| 飛行回数 | 2回 |
| 主な分野 | 宇宙医学と生命科学 |
| 位置付け | アジア人初の女性宇宙飛行士 |
向井さんの飛行は、女性の身体が宇宙任務に適応できることを示すだけでなく、宇宙環境による循環器や筋肉などの変化を研究するうえでも大きな意味を持ちました。
ただし、JAXAの向井千秋さん公式経歴には個人的な月経管理方法は記載されていないため、搭乗時の生理や服薬について推測することは避けるべきです。
山崎直子
山崎直子さんは航空宇宙工学を学び、日本実験棟きぼうの開発業務などを経験した後、1999年に宇宙飛行士候補者へ選ばれ、2001年に宇宙飛行士として認定されました。
2010年にはスペースシャトルのディスカバリー号によるSTS-131ミッションに参加し、国際宇宙ステーションへ運ばれた大量の物資を管理するロードマスターを務めました。
- 物資移送作業の取りまとめ
- 国際宇宙ステーションのロボットアーム操作
- スペースシャトルのロボットアーム操作
- 地上での宇宙機開発と運用支援
山崎さんの任務中には、国際宇宙ステーションに長期滞在していた野口聡一さんと軌道上で合流し、日本人宇宙飛行士2人が初めて同時に宇宙へ滞在しました。
JAXAの山崎直子さん公式経歴からは多様な技術的役割を確認できますが、月経の時期や生理用品の選択などは公表された任務情報ではありません。
米田あゆ
米田あゆさんは東京大学医学部を卒業し、医師として病院に勤務した後、2023年にJAXAの宇宙飛行士候補者として採用されました。
宇宙科学、工学、航空機操縦、サバイバル、医学、体力などに関する基礎訓練を修了し、2024年10月21日付で正式なJAXA宇宙飛行士に認定されています。
2026年6月時点では宇宙飛行の経験はなく、将来の任務へのアサインメントに備えて訓練中であるため、すでに国際宇宙ステーションへ滞在した女性宇宙飛行士として紹介するのは正確ではありません。
医師の経験を持つことは宇宙医学への理解に役立つと考えられますが、実際の任務では医学だけを担当するのではなく、宇宙船システム、科学実験、緊急対応など幅広い能力が求められます。
JAXAの米田あゆさん公式プロフィールでは認定後も訓練を続けていることが示されており、具体的な搭乗時期や月経管理について未公表の内容を先回りして断定することはできません。
月経管理が任務設計に関わる理由

宇宙飛行中の月経は、本人が生理用品を持っていけば終わる単純な問題ではなく、打ち上げ重量、収納場所、廃棄物、衛生設備、医薬品、体調管理など複数の仕組みに関係します。
国際宇宙ステーションへは定期的に補給船が到着しますが、地上の店舗のように必要な物をその日のうちに追加できないため、予定より出血が増えた場合や任務が延長された場合も想定した準備が必要です。
月や火星を目指す任務では地球からの補給がさらに難しくなるため、月経を抑えるかどうかを含め、本人の選択を支えられる設備と医療体制が重要になります。
物資の量を抑える
宇宙へ運ぶ物資は重量だけでなく容積、燃えやすさ、におい、保存期間、包装材の量なども審査されるため、生理用品も必要数を計算して搭載計画へ組み込まれます。
数日間の短期飛行と半年程度の長期滞在では必要量が大きく異なり、月経周期が予定からずれたり不正出血が続いたりする可能性も考えて予備を用意しなければなりません。
- 未使用の生理用品
- 交換用の下着
- 清拭用ワイプ
- 使用済み用品の密封袋
- 鎮痛薬などの医薬品
- 予期しない出血への予備
月経を抑えれば衛生用品の量を減らせる可能性がありますが、毎日服用する薬にも重量、包装、使用期限、保管条件があるため、単純に荷物がゼロになるわけではありません。
最適な方法は出血量や体質によって異なるため、荷物を減らす目的だけで本人に月経抑制を求めるのではなく、健康と自己決定を優先したうえで物資を調整する必要があります。
廃棄物を安全に保管する
宇宙船内では使用済みの生理用品を地上のトイレへ流したり、毎日外部へ捨てたりできないため、におい、液漏れ、微生物の増殖を抑えながら一定期間保管します。
使用済み用品はほかの固形廃棄物と同様に袋へ密封し、決められた場所へ収納した後、補給船などによる廃棄手順へ回すことが想定されます。
| 管理対象 | 主な対策 |
|---|---|
| 液漏れ | 吸収材と密封袋 |
| におい | 個別包装と早めの密封 |
| 浮遊 | 用品と袋を固定 |
| 取り違え | 保管場所と表示を統一 |
| 数量不足 | 予備を含む事前計画 |
月経用品だけが特別に不衛生なのではなく、食事の包装、排泄物、清拭用品、医療廃棄物など、閉鎖された宇宙船で発生するすべてのごみを安全に管理する必要があります。
将来の長期探査では廃棄物を何年も保管するのではなく、圧縮、乾燥、再利用、資源回収などの技術と月経衛生用品の設計を一体で考えることが求められます。
長期任務ほど選択が重くなる
数日間の任務であれば出発前に周期を調整して飛行日と月経をずらせる場合がありますが、数か月から数年に及ぶ任務では時期をずらすだけの対応はできません。
長期任務で月経を抑える場合には、薬を毎日忘れずに使用できるか、長期間の保存に耐えられるか、不正出血が起きたときにどうするか、帰還後に継続するかまで検討します。
自然な周期を維持する場合には、任務期間中に必要となる用品の数量、鉄分を含む栄養状態、月経痛、貧血の兆候、衣類や清拭用品の不足を継続的に管理します。
月や火星では通信に遅れが生じ、地上の医師から即時に指示を受けられない場面も想定されるため、本人とクルーが異常出血や強い腹痛への対応手順を理解しておく必要があります。
月経の有無を任務成功のためだけに管理するのではなく、本人が選んだ方法を長期間安全に続けられる環境を整えることが、持続可能な有人探査につながります。
月経を抑える方法は一律ではない

月経を抑える方法には複数の選択肢がありますが、効果の現れ方、副作用、血栓のリスク、骨への影響、不正出血の頻度、装着や中止のしやすさは方法ごとに異なります。
宇宙飛行士だから特別な薬を自分の判断で使うのではなく、地上で用いられている方法を基礎として、フライトサージャンや婦人科医が任務特有の条件を加えて評価します。
以下は宇宙医学の研究で検討されている代表例であり、一般の人が旅行や仕事に合わせて月経をずらしたい場合にも、自己流で服用せず医療機関へ相談することが必要です。
連続服用のピル
低用量ピルなどの配合薬を休薬せず連続的に服用すると、排卵や子宮内膜の増殖を抑え、月経に似た消退出血を減らせる可能性があります。
長期滞在中も毎日服用する方法は中止や調整を行いやすい一方、任務日数分の錠剤と予備を運び、飲み忘れや保管温度、使用期限を管理しなければなりません。
| 視点 | 主な特徴 |
|---|---|
| 利点 | 開始と中止を調整しやすい |
| 負担 | 原則として毎日の服用が必要 |
| 出血 | 不正出血が起こる場合がある |
| 物資 | 任務日数分の薬と包装が必要 |
| 注意 | 体質により血栓リスクを評価 |
エストロゲンを含む配合薬は血栓症との関連が知られており、宇宙飛行中には体液の移動や静脈の血流変化も起こるため、既往歴や家族歴を含む個別評価が欠かせません。
使用経験のない薬を打ち上げ直前に始めると副作用や不正出血への対応が難しくなるため、通常は地上で十分に試し、本人に適していることを確認してから任務用の計画を立てます。
IUDなどの長期型
黄体ホルモンを放出する子宮内システムや皮下インプラントは、毎日の服用を必要とせず、長期間にわたって避妊や出血量の減少が期待できる方法として研究されています。
薬を大量に運ぶ必要がなく飲み忘れも防げるため長期探査との相性がよい可能性がありますが、使用開始後に不規則な出血が続く人もいるため、必ず月経が完全に止まるわけではありません。
- 毎日の服用が不要
- 搭載する薬の量を減らせる
- 効果が長期間続く
- 不正出血が起こる場合がある
- 装着前の診察が必要
- 本人に合わなければ交換や除去が必要
子宮内システムは事前に医療機関で装着し、位置や出血パターンを確認する必要があり、任務の直前に初めて導入する方法には向きません。
どの長期型方法が適しているかは年齢、出産歴、婦人科疾患、薬への反応、将来の妊娠希望などによって変わるため、宇宙飛行士であっても個別の診療が基本です。
血栓と骨への配慮
ホルモン剤を利用した月経抑制では、薬の種類によって静脈血栓塞栓症や骨密度への影響が異なるため、出血を止められるかだけで選ぶことはできません。
宇宙では重力による骨への負荷が小さくなり、対策を行わなければ骨量が減少しやすいため、地上でも骨密度低下との関連が懸念される方法は慎重に評価されます。
血栓についても、エストロゲンを含む薬、血栓症の既往、遺伝的な素因、年齢、喫煙、長時間の不動などを確認し、必要に応じて別の方法を検討します。
NASAの技術報告で扱われた月経管理と血栓リスクでも、地上のリスク評価だけでは宇宙飛行特有の身体変化を十分に反映できない可能性が示されています。
薬を使わず自然な月経を維持する場合にも、出血による鉄不足、強い月経痛、子宮内膜症などへの配慮が必要であり、月経を止めない選択が常に無リスクというわけではありません。
よくある疑問を事実で整理する

女性宇宙飛行士の生理をめぐっては、宇宙で妊娠できるのか、女性は採用されにくいのか、宇宙服の中で生理になったらどうするのかなど、月経以外の疑問も一緒に検索されます。
これらの話題には科学的な研究が不足している領域もあり、過去の逸話、想像上の宇宙生活、現在の運用ルールを混ぜると誤った結論になりやすい点に注意が必要です。
現在行われている有人宇宙飛行と、将来の月面基地や火星移住を同じ条件として扱わず、現時点で実施されていることから順に確認することが理解への近道です。
宇宙での妊娠は想定されていない
現在の職業宇宙飛行では妊娠した状態で宇宙へ行くことは想定されておらず、放射線、微小重力、打ち上げ時の加速度、医療設備の制約から母体と胎児の安全を確保できないためです。
人間が宇宙で受精し、妊娠期間を過ごし、出産した公的な事例はなく、動物実験の結果だけから人間の妊娠や胎児発育の安全性を判断することもできません。
| 段階 | 現在分かっていること |
|---|---|
| 月経 | 宇宙でも起こり得る |
| 排卵 | 人での長期データが限られる |
| 受精 | 有人任務での事例は確認されていない |
| 妊娠 | 現在の宇宙飛行では想定されていない |
| 出産 | 人間の宇宙出産例はない |
月経が起こることと、安全に妊娠や出産ができることは別の問題であり、月経が正常に見えても卵子、子宮内膜、胎盤、胎児への放射線や微小重力の影響が解明されたことにはなりません。
将来、人類が月や火星で長く暮らすためには、生殖細胞への放射線影響、妊娠中の骨や筋肉の変化、胎児の発育、緊急帝王切開を含む医療体制などの研究が必要です。
女性だけが採用で不利とは限らない
かつては月経が宇宙飛行の妨げになるのではないかという偏見や、男性を基準にした宇宙船設計が女性の参加を遅らせましたが、現在は月経があるという理由だけで任務能力が否定されるものではありません。
宇宙飛行士には性別を問わず、医学的な適性、専門知識、判断力、協調性、語学力、体力、緊急時への対応力などが総合的に求められます。
- 健康状態と任務への適応力
- 科学や工学などの専門性
- チームで働く能力
- 長期隔離への心理的適性
- 訓練を継続できる体力
- 状況を伝えるコミュニケーション力
一方で、宇宙医学の研究対象に女性が少なかったことや、宇宙服と設備が幅広い体格に十分対応していない問題は残っており、形式的に応募できることと実質的な環境が整っていることは分けて考える必要があります。
JAXAの宇宙飛行士一覧では、2026年5月時点で米田あゆさんを含む6人が現役宇宙飛行士として在籍していることが確認できます。
民間宇宙旅行でも準備が必要
民間の短時間宇宙旅行では滞在時間が短いため、月経を必ず抑える必要はありませんが、打ち上げ当日に出血や強い痛みが重なる可能性を考えて準備する価値があります。
参加者は職業宇宙飛行士ほど長期間の訓練を受けない場合があるため、宇宙服や座席からトイレへ移動できる時刻、生理用品を交換できる場所、使用済み用品の保管方法を運航会社へ事前に確認する必要があります。
市販薬やホルモン剤の持ち込みには申告や医師の確認が必要になる可能性があり、普段使っている薬だから無条件に機内で使用できるとは限りません。
月経カップやタンポンなど使い慣れていない用品を旅行当日に初めて選ぶと、装着の失敗や漏れにつながるため、地上で十分に試した方法を基本にすることが安全です。
民間宇宙旅行が一般化するほど、月経のある人だけに我慢や服薬を求めるのではなく、交換場所、廃棄袋、清拭用品、プライバシーを標準設備として用意する考え方が重要になります。
女性宇宙飛行士の生理を正しく捉えるために
日本人女性宇宙飛行士も宇宙で月経を迎えることは可能であり、無重力だから経血が排出できず体内にたまるという見方には、現在のところ確立した医学的根拠がありません。
実際の課題は、吸引式トイレ、限られた水、洗濯できない環境、衛生用品の搭載量、使用済み用品の保管、痛みや不正出血への備えであり、月経を抑える方法はこれらの負担を減らす選択肢の一つです。
向井千秋さんと山崎直子さんは宇宙飛行を経験し、米田あゆさんは2024年に宇宙飛行士として認定されましたが、3人がどのように月経を管理したか、または将来管理するかは公開された経歴から判断できない個人の医療情報です。
自然な月経を維持する場合も、ピルや子宮内システムなどで抑える場合も、それぞれに利点と注意点があるため、本人が医学的な説明を受け、体質と任務条件に合う方法を選べることが欠かせません。
女性宇宙飛行士の生理を特別な弱点として扱うのではなく、多様な身体を持つ人が安全に働ける設備と研究を整える課題として捉えることが、月や火星を目指す有人宇宙開発の発展につながります。



